昨今では、IT化による作業の効率化や働き方改革など、社会全体として時間に対する意識が変わってきました。
しかし、時間を意識すること自体は、ゴールではありません。
その先には、本来やりたかったことをやるため、大切な人との時間を増やすためなど、より豊かな人生にするための目的があるはずです。
今回は、有意義に人生の時間を使うための「時間を意識する方法」と「時間管理術」をご紹介します。
目次
時間を意識するための第一歩
著名な小説家である森博嗣氏は、デビュー作の『すべてはFになる』(講談社文庫)にて、こう綴っています。
金よりも時間の方が数千倍貴重だし、時間の価値は、つまり生命に限りなく等しい。』
人の生命が有限である以上、人の持つ時間もまた有限です。
やりたいことや、成したいことを全て叶えるには、人の人生はあまりにも短いのが現実。
気にとめず生きているだけでは、時間はただ「過ぎる」だけです。
だからこそ、どんな状況においても、時間を「使っている」と意識することが、有意義な時間をつくるための第一歩となります。
時間を意識する習慣の身につけ方
では実際、「時間を意識しよう」と言っても、どう意識すればいいのでしょうか?
それは時間の使い方を日頃から見直すようにすることです。
まずは、今の時間の使い方を見直してみましょう。
①自分の有した時間に「やるべきこと」を割り当てる
「レイバースケジュール」という考え方をご存知でしょうか。
仕事に対して人員を割り当てるのではなく、人員に対して仕事を割り当てるという働き方のことです。
スーパーやドラッグストアなどの小売業で積極的に取り入れられています。
その日に発生する業務を、今いる人員で取りかかっていくのが従来のやり方。
それに対して、レイバースケジュールでは、今いる人員が適材適所で業務にあたっていきます。
これにより、作業の効率化、労働力の無駄を省くことで人件費を削減することができます。
経営の指針として提唱されているレイバースケジュールですが、この考え方は、個人が時間配分を見直す状況においても非常に参考となります。
「やるべきこと」に対して時間を充てるのではなく、有した時間に対して「やるべきこと」を割り当てる。
端的に言えば、「今日はこれだけ時間があるから、あれをやろう」というだけの話です。
多くの人は「やるべきこと」に時間を充てている
言葉にすると簡単なことですが、実際には多くの人が必要に迫られる物事に追われるばかりです。
だから、有した時間を前提に、「行動を選択する」という発想は中々持てません。
余裕のないままで時間を使っていては、たとえそこに無駄が存在したとしても、気づくことができないからです。
②その日にするべきかどうか考える
現状負っている業務があり、それを消化するために時間を使っているとします。
まず、時間を使う前に考えてもらいたいのが、
②現在有してる時間で作業を完了できるの
かの2点です。
日本の風潮として、やるべきことを先送りにすることは悪い印象を持たれがちです。
しかし、締切などを確認した上で、着手する案件を選んでいくことは非常に賢いやり方でもあります。
明日やれば良いことを、無理して今日やるのは効率的とは言えません。
時間配分を十分に吟味し、それに見合った行動を選択することで、普段できない仕事や、早く着手したいことに時間を使うことが可能になります。
逆に、今日終わらせなければならない仕事があるのに、他の業務に時間を割くせいで、締切に支障が出てしまうようなケースでは、優先度の低い仕事を思い切って先送りにしましょう。
「今日はこれをする日だ」という意識をもって一日のスケジュールを調整することで、集中力も高まり作業が効率的になります。
その結果、通常より早く業務を完了できる可能性も生まれ、他のことに充てられる時間が発生します。
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仕事の優先順位のつけ方と取り組み方
③アイドルタイムを無くす
「アイドルタイム」とは、作業を行っていない時間のことです。
例えば、作業が完了してから次の作業に移る場合だと、次の作業の内容の確認や、移動や準備にかかる時間などがアイドルタイムにあたります。
アイドルタイムは「非作業時間」とも言われ、企業などでは業務時間内での非生産的な時間を指し、レイバースケジュールを施行する上で改善するべき第一目標としても掲げられることが多いです。
日常においても、アイドルタイムの存在を認識し、それを減らしていくことによって、自由に使うことのできる時間を増やすことができます。
気を付けなければいけないポイントは、削減するのは作業の中での無駄であり、休憩や休日を返上して作業に充てることは間違いだということです。
人間の集中力の持続には必ず限界があります。
なので、適度に休息を入れることは必須です。
無理やり身体に鞭を打ち作業を続けても、結果として効率は悪化するでしょう。
ちなみに「空いた時間」はアイドルタイムではありません。
空いていない時間の中の、浪費してしまっている時間を見付けていきましょう。
おすすめの時間管理術
今までの時間の使い方を見直したら、次は、これからの日々の時間を管理(スケジュール管理)していきましょう。
具体的にどうやってスケジュールを組み立てていくのかご紹介します。
①To Doリストを作る
その日のタスクを箇条書きにして、残っている仕事を確認するために役立つTo Doリスト。普段から活用している人も多いかもしれませんが、今回はこれを3つのセクションに分けて作成していきます。
分ける指針は、「月」、「週」、「日」です。
期限があるならばそれも明記し、月間での作業目標としてリストアップしてください。
月のリストを参考にしつつ、「この週の内にあの作業を完了させる」といったように、ノルマを設定しながらリストを制作します。
その日の持ち時間を確認して、週のノルマから行っていく作業を選択してください。
当日に発生するであろう業務も組み込み、一日の自分の動きをあらかじめ設定します。
以上が一連の組み立て方です。
自分のすべき行動を明確にすることが大切
この手法のメリットは、自分のすべき行動を明確にできる点にあります。
今何をすべきか、次に何をすべきか。思考と行動に使う時間の内、思考に使う時間を可能な限り省くことで、より内容の濃い時間を送ることができるようになるのです。
より正確なリストを作るならば、スケジュール帳やカレンダーに月と週の目標を記入しておくのもオススメです。悩む時間を極力排して、常に「時間を使う」ように心がけましょう。
②無駄ではない無駄な時間を作る
単純に時間を増やすだけなら無駄を排するだけで事足ります。
しかし、人生を変えるための時間の意識を得るためには、それだけでは一歩及びません。
効率を重視するだけでは人生を変えることはできないからです。
また、徹底したスケジュール管理が習慣化すると、あらゆる無駄を許せなくなってしまうことが考えられます。
人を待つ時間や業務上の待機時間、エスカレートすると休憩や休日まで無駄と感じてしまうこともあります。
そんな余裕のない生き方で、人生を変えることができるのか。答えはNoです。
人生の目的は人それぞれでしょうが、現在の人生に変化をもたらしたいと思うのならば、神経をフラットにして、感性を養う時間が必ず必要となります。
何も考えない時間を確保しよう
スケジュール管理で新たに発生した時間をいかにして使うのか。
ここで提案するのが、「無駄を省いて生まれた時間を、無駄なことに使う」という考え方です。
要するに、何も考えずにただ楽しいだけの時間を定期的に確保するということです。
樺沢紫苑氏の著書「アウトプット大全」(サンクチュアリ出版)でも、何もせず「ぼーっとするだけの時間」の有用性を提唱しています。
実は、脳を休めるだけでなく、脳の活性化にもつながるというのです。
また、新しいことを始めるにしろ、最終的に鍵となるのは心の余裕。
精神的な疲れを取り、余裕を持つためにも、あえて「無駄な時間」を確保しましょう。
最後に
「人生の負け組」という言葉がありますが、人の人生の勝ち負けは、他人が自分の物差しで測っていいものではありません。
しかし、自分で自分の人生を「良くない人生だ」と思ってしまうことは、できるなら避けたいところでもあります。
時間に追われ続けて、ふと振り返ったとき、「こんなはずじゃなかった」と後悔しないように、時間の持つ価値を正確に認識することが大切です。それが、人生を変えるための第一歩となります。
自分の使ってきた時間を思い返して、「良い人生だった」と思えたならば、誰がなんと言おうとそれは勝ち組の人生です。今回の記事が、皆さんがそんな素敵な時間を得るための手助けになれたならば幸いです。