社会人として生活していると、多くの場面で自分を犠牲にすることを強いられる場面に遭遇します。
それは社会を回すために必要なことであり、自分がその社会の中で生きていくためにも受け入れざるを得ないことでもあります。
しかし、自分が犠牲となることに慣れ過ぎると、自己のヒエラルキーの中における自身の順位が、どんどん下降します。
自分の扱い方を、自分自身の手で悪いものへと変えてしまうのです。
そうならないためにも、普段から意識して『自己重要感』と『自己肯定感』を高める必要があります。
自分の価値を正しく認識し、何よりも『自分を大切にする』ためにも、この2つの必要性と、その高め方を知り、自分の人生をより良くするための行動力を身につけましょう。
自己重要感とは何か
そもそも、自己重要感とは何か。
自己重要感は、書いて字のごとく『自己を重要だと感じること』です。
自分を大切にしてもらえているという実感や、自分で自分のことを好きになることで得られる感覚です。
承認欲求と似た概念として説明されることがありますが、自己重要感はより広い意味を持ちます。
承認欲求は「周りから認められたい」という外向きの感情ですが、自己重要感はそれも含めた上で最終的に自分が自分に対して下す評価と言えるでしょう。
例えば、仕事での成功が評価されて承認欲求が満たされれば、自分は会社にとって必要な人間であることが実感でき、自己重要感も高まっていきます。
しかし、周りの評価のために誰かを蹴落としたり、人知れず決して褒められないようなことをしていた場合だと、得られた評価によって承認欲求は満たされても、自分の人としての価値に疑問を持ってしまえば、結果として自己重要度が低くなることもあります。
自己重要感とは、周りからの評価や価値基準だけで得られるものではないのです。
自己肯定感との違いや関係性
『自己肯定感』は、比較的聞き馴染みのある言葉ではないでしょうか。
「自分は大丈夫だ」「自分はダメじゃない」といったことを、実感として得られるかどうかを表した言葉です。
自己肯定感と自己重要感には密接な関係があります。
一見すると自己重要感と同じような意味に思えるかもしれませんが、根本的な部分では大きく違っています。
自己肯定感が高い=自己重要感が高いというわけではないのです。
自分の自己肯定感が周りからの評価によって得られているものだとします。
「誰かの役に立っている」という実感が、自分にとってのアイデンティティとなっているケースです。
これは裏を返せば、役に立たない自分は無価値だと定義づけてしまっているとも言えます。
この状態で自己肯定感に依存してしまうと、自分のことよりも周りのために使われることばかりを優先してしまい、結果として自己重要感は著しく下がってしまうのです。
対して、「自分がダメなことは分かっているけれど気にしない」という人は、自己肯定感は低いけれど自己重要感は高いと言えるでしょう。
こういったように、自己肯定感と自己重要感は、お互いに影響し合うことはあっても、必ずしも同じベクトルを持つとは限らないのです。
どちらかを優先するあまり、もう一方が蔑ろになることも十分起こり得ます。この2つをバランスよく高めていくことがとても重要なのです。
自己重要感が高いことのメリット
自己重要感は、自己肯定感とは少し違うニュアンスを含んでいるため、そのときに得られる幸福感という観点ではあまり重要なものだと思われないかもしれません。
しかし、自己重要度を高めないと得られないメリットは確かに存在するのです。
①自分を守るための行動力
特に顕著なのが自己防衛に関わってくることです。
社会生活の中で、自己犠牲を強いられたり、無理難題を押しつけられたりしたとき、自己重要感が高ければそれらを「断る」という選択肢を自然と選ぶことができます。
逃げることに対する抵抗感が、良い意味で軽減されるのです。
より良い人生を送る上で、自分を大切にすることは大前提です。
自己重要度が高まれば、自己防衛のための行動を躊躇いなくとることができます。
②人間関係が円滑になる
周りの評価に惑わされず、自分自身を重要だと思えるということは、過度に自分と周囲とを比べる必要がなくなります。
周囲の意見に左右されない自信を得ることができるのです。
そのような心理的な状態は、自然と自分の振る舞いにも現れます。
一番のメリットは、人を見下すことがなくなる点。
そもそも比較する必要がないわけですから、他者を許容し受け入れる余裕が生まれるのです。
そうなれば、余計な波風を立てることがなくなり、さらには自分への評価へと繋がり、巡り巡って自己重要感も自己肯定感も高まることになります。
③やりたいことを実践する行動力
自己重要感が低いと、やりたいことを実践する力にストップがかかってしまいます。
つまり、自分のために時間を使う、自分のために行動する、ということができなくなってしまうのです。
これは、言ってしまうと人生における損失です。
自分のやりたいことができるか否かは、人生の質そのもの。
自己重要感を高めることができれば、自分のやりたいことが重要であると気づけるようになるのです。
自分のために自分の時間を使うことは決して間違っていることではありません。
それに気づけるかどうかの鍵を、自己重要感が握っているのです。
自己重要感と自己肯定感の高め方
ここからは、実際に自己重要感と自己肯定感をバランスよく高めていく方法をご紹介します。
自分を大事だと思いつつ、自分の価値を認められるようになるために、1つ1つ実践してみてください。
①理想の自分を目指す
自分のことを重要だと思えるようになるためには、まずは、周りに影響されることない、自分の中の芯を確立すること。
これが一番の近道です。
「こんな自分になりたい」という、理想の自分の形がどういうものなのか、一度考えてみましょう。
自分の価値を、周りの評価や価値観を基準に決めてしまうと、周りの評価や環境によって自分の軸も変わってしまいます。
周りの価値観が変化すれば、それに伴って自分の価値そのものも変化していくからです。
そうならないためには、いつでも自分が好きだと思える自分になる必要があります。
周りから何を言われようと、自分で自分を肯定できるようになれば、自ずと今の自分を大切に思えるようになりますよ。
②趣味を持つ
仕事などが上手くいかないとき、失敗してしまったときに、落ち込むことなく自己重要感と自己肯定感を高めるための手段が、趣味を持つことです。
仕事とプライベートを切り分けるための手段として、趣味を活用します。
仕事の失敗や食い違いで生じる評価は、基本的にきちんと受け止めて、改善しようという姿勢をとる必要があります。
しかし、仕事で人格まで評価されてしまったら…?
『それはそれ』として考えて、自己評価を過度に貶めることのないようにしなくてはなりません。
そのために必要となるのが、時間の色分けです。
趣味を持ち、自分のためだけに使う時間を確保する習慣を身につければ、仕事とプライベートを切り替えるスイッチを得ることができます。
仕事が人生の全てではないということをしっかり認識すれば、自己重要感(肯定感)を高めることはもちろん、もし下がってしまうような状況でも、その下降を最低限で押し留めることができるのです。
③日頃から幸福感を高める
自己重要感と自己肯定感は、バイオリズムによって左右されることがあります。
嫌なことが続いて気分が下向きになると、自分に対する評価も悪い方向へといってしまうでしょう。
人生に波があるのは当たり前のことであり、常に順風満帆な日常を送ろうというのは現実的に考えて難しいことです。
では、いざ自分が向かい風に見舞われたときにどう対処すればいいのでしょうか。
そこで重要になるのが、幸福感です。
悪い出来事で落ち込んでしまったときにこそ、一日を暗いものにしないために、自分が幸福だと感じることを進んでやるようにしましょう。
この場合でも趣味を活用することができますし、美味しいものを食べたり、友達と遊びに行ったりするような何気ないことでも、十分効果が見込めます。
小さな幸福でも、日頃から意識していれば積もり積もって大きな幸福となります。
自分で自分を認めるためには、幸せであることがとても大切なのです。
最後に
今回解説した自己重要感と自己肯定感ですが、この記事であえてご紹介しなかった簡単な高め方があります。
それが他者を利用した高め方です。
自分で自分を重要な存在だと思うことは、承認欲求を満たすことでも簡単に叶えられるでしょう。
しかし、そうやって得た自己重要感(肯定感)は脆く、すぐに消えてしまいます。
自分で自分を認めたり、自分を好きになることは難しいことです。
多くの人が、承認欲求を満たしながらアイデンティティを守ろうとするのは、自己重要感が低いからです。
自分の人生を歩むためには、自分のために行動する力が大事です。
そして、その行動力を生み出してくれるのが自己重要感です。
人にどう思われるかよりも、本当は自分がどうしたいのかに目を向けるようにしましょう。