心理学者であるマズローは、「人間は自己実現に向かって絶えず成長する生き物である」と仮定し、人間の欲求を5段階に理論化しました。
この理論では、欲求には生理的欲求、安全欲求、社会的欲求、承認欲求、自己実現欲求と5段階あり、人間は1つの欲求が満たされると、次の欲求を満たそうとする生き物だとされています。
下位の欲求では、食べ物や衣服、住居などの目に見えるものではありますが、上位になると、他者からの評価や自己満足感などの目に見えないものとなります。
その中の一つに『寂しい』というマイナスの感情が存在します。
実は、この『寂しい』という感情は、1人のときだけでなく、誰かと一緒にいても感じることがあるのです。
寂しいのは一人の時だけじゃない
「自分は孤独だ」と思ったときに、人は「寂しい」と感じます。
しかし、家族や交際相手、友人と一緒にいても、寂しいと感じることがあります。
その理由は、どちらの場合も、あなた自身が望むものが満たされていないから。
各個人が望むものは、人それぞれ異なります。
これは、そのときの環境が原因なのではなく、これまでの人生のなかで、どんな環境で過ごしてきたのかが影響しているのです。
しかし、環境は影響を与えることはあっても、あくまでも直接的な原因ではありません。
結論として、寂しい原因はあなた自身の中にあることから、誰かと一緒にいても寂しく感じてしまうのです。
寂しいと感じる原因
前述で、各個人が望むものが満たされていないために、寂しさを感じると説明しました。
ここでは、マズローの欲求5段階説とともに、人が寂しいと感じる原因を解説いたします。
社会的欲求が満たされていないケース
社会的欲求とは、集団への帰属や愛情を求める欲求のこと。
この欲求が認められないと、「自分は孤独だ」と認識してしまい、寂しいという感情が芽生えます。
このケースで望むものとは、自分が所属していると認識できる集団であったり、いつも一緒にいる友人が1人でも2人でもいること。
実は、精神的にも幼い未成年の学生が通う学校がクラス制になっているのも、この欲求を満たすためだと言われています。
承認欲求が満たされていないケース
承認欲求とは、「他者から尊敬されたい」「認められたい」と願うような内的な心を満たしたい欲求のことです。
このケースでは、社会的欲求の所属していることは前提となり、さらに深い心の結びつきを他者に求めたり、他者からの賞賛を求めます。
なお、承認欲求においては、人によって求めるレベルが異なるのも特徴であり、低いレベルの尊重欲求で満足する人もいれば、高いレベルの尊重欲求でないと満足できない人もいると言われています。
自己実現欲求が満たされていないケース
自己実現とは、自分の世界観・人生観に基づいて、あるべき自分になりたいと願う欲求のこと。
したがって、このケースになると、日々の生活の中で充実感や達成感、やりがいを感じられていなければ満たされることはないため、仕事が忙しくて家と仕事の往復しかしていないような日々の変化がない生活を送っていると、自分の人生が寂しいと感じてしまいます。
寂しい時の対処法(マインド編)
人間である以上は、何かしらの欲求を持ってしまうことは自然なことであり、その強さにも個人差は必ず存在します。
強さによって、時間が経てば忘れられる場合もあれば、何も手につかなくなってしまう場合もあります。
ここからは、何も手もつかなくなってしまう方に向けて、まずはマインド的な対処法をご紹介いたします。
自分の求めているものを知る
まずは、自分自身がなぜ寂しいと感じるのかの原因を考えてみましょう。
過去との比較方法
原因の考え方として一番おすすめの方法は、あなた自身やあなたの周囲で、最近何か変わった出来事を探すこと。
その変化によって、あなたが得られていたものが得られなくなったために、「寂しい」と感じているのではないでしょうか。
カップルを例に考えてみましょう。
あなたには、付き合っているパートナーがいます。
パートナーとは、すでに2年の交際期間があります。その2年間、パートナーの行動や言動から、相手の愛情をいっぱい感じることができていました。
しかし、3年目に差しかかる頃から、相手の変化を感じるようになり、以前ほどの愛情を感じられなくなってきたと自覚したときに、満たされていない感覚が芽生え、「寂しい」と感じるようになっていきました。
この場合、起きた変化は、“パートナーの行動や言動”であり、得られなくなったものは、“付き合い当初から感じていた相手からの愛情”となります。
このように、以前と比較をすることで、あなたが得られなくなったものを考えることができます。
新しい欲求目標を考える
冒頭で解説した『マズローの欲求5段階説』の中で、「人間は一つの欲求が満たされると、次の欲求を満たそうとする生きもの」と定義づけされています。
つまり、これまで欲していた欲求が満たされたために、現状に寂しいと感じるようになった場合は、次の段階の欲求を欲しているのだと推測できますよね。
具体的な目標を考え、その目標が実現するまでの過程と実現した瞬間は、とても充実した時間になるでしょう。
求めているものを得る方法を考えてみる
自分の求めているものが自覚できれば、次に考えることは『方法』となります。
しかし、方法といっても、必ずしもあなたが望む結果につながるとは限りません。
なぜなら、カップルの例の場合、あなたが求めているものは、相手からの変わらない愛情であるため、あなたが何をしても相手の想いや行動などを変えられる保証がないからです。
だからこそ、方法を考える際は、相手の想いや行動を変えられる可能性がある方法と、あなた自身を変えるための方法と、多面的に考えることが必要となります。
考えた方法の中で、行動に移す順番や時期を決める
方法をいくつか考えることができたら、後は行動あるのみ。
しかし、闇雲に行動してしまうのは非効率なため、行動に移すべき順番や時期はしっかりと考えましょう。
そして、前述にもあるように、1つの方法だけを実行するだけでは不十分であるため、複数の方法を同時に進めていくことをおすすめします。
寂しい時の対処法(行動編)
マインド的な対処法さえ、しっかりと考えることができれば、あとは考えた計画通りに進めていくだけです。
ただし、ここで重要なのは、「あなたが求めているもの」を正確に自覚できていなければ、考えた行動は、あなたの寂しさを埋めることにはつながらないということ。
ここからは、行動する際の目的の考え方をみていきましょう。
「求めているもの」を変えずに追いかけ続ける
どんなものを求めているかによって、有効な場合とそうでない場合とがありますが、これはあなた自身が「諦められるのかそうでないのか」が1つの指標となります。
頭では「仕方がない」「納得するしかない」と理解していても、感情的に「諦めきれない」ことが、世の中にはたくさんあります。
特に、カップルの例のような「好き」という感情においては、すぐに諦めることは難しいでしょう。
また、周囲の人からの好意的な評価や尊敬されることなども同様に諦めることは容易ではありません。
この場合、辛い思いをするかもしれませんが、あなた自身が納得できるまで、追いかけ続けるしかないのです。
「求めているもの」を他のもので補う
求めるものや個人の性格によりますが、時には代用という手段が有効な場合もあります。
カップルの例で言えば、「新しいパートナーを探す」ことになります。
もしくは、「あなたが望む評価をしてくれる新しいコミュニティを見つける」などです。
対象にこだわりがないのであれば、目的の考え方として参考にしてみてください。
最後に
一人でいるときに「寂しい」と思うことも、誰かと一緒にいても「寂しい」と感じることも、恥ずかしがることはありません。
「寂しい」と思うことに、性別も年齢も関係はありません。
重要なのは、「寂しい」という感情に対して、あなたがどう向き合い、どう行動するかということ。
自己と向き合い、あなたが「求めているもの」が何かを自覚しましょう。
その上で、「どれだけ強く求めているか」を考え、追い続けるのか、代用を探すのかを考え、行動に移していきましょう。