人は無意識のうちに、「得をするより損をしない方を選ぶ」という「損失回避の法則」が行動心理学で実証されています。
なかなかチャレンジできない原因は、損失回避性によるものかもしれません。
人の心理というものは、あらゆる場面で自分自身を守り、安全な道に導きます。
しかし、反対にあなたを躊躇させたりチャンスを逃してしまうことも。
「損失回避の法則」の意味や仕組み、なぜチャレンジできない原因になるのかを知り、心の中の不安を解消して、チャレンジできるようになりましょう。
損失回避の法則【得をするより損をしたくない】
損失回避の心理は、自然な心の動き
「損失回避の法則」とは、何か大きな決断やチャレンジをするときに、無意識に「損をしないように」と働きかけること。
意図して起こるものではなく、ごく自然と備わっている人間の性質です。
自分を危険から守る、自己防衛能力でもあります。
損失回避の心理は誰にでも働く
突然ですが、ここで、二つの種類の参加型ゲームがあったとします。
・10万払ってゲームに参加して勝ったら100万円もらえる
参加者はどちらの方が多いと思いますか?
また、あなたならどちらのゲームに参加するでしょうか?
人は無意識のうちに安全な方を選びます。
リスクが高いことを選ぶより、得が少なくても損をしないことを選ぶ方が安全だからです。
したがって、この参加型ゲームは前者の方が参加者が多くなります。
これは「損失回避の法則」が共通して多くの人に働いた結果になるのです。
損失回避の心理が働くとき
「損失回避の法則」とは「得をするより損をしたくない」という心理です。
得や損と言っても、お金だけではありません。
あらゆる物事のデメリットとメリット、リスクとリターンに反応します。
例えば、あなたに今、やってみたいことがあるとします。
それには、今の仕事を辞める必要があるかもしれません。
↓
しかし職を失い、文無しになったら大変
↓
だったら嫌な仕事でも何もないよりはましだ
↓
チャレンジしないまま諦めよう
こういった一連の心理も、「損失回避の法則」が働いて「リスクが少ない方」を選んだ結果。
あなたの今までの行動を振り返ってみてください。
石橋を叩きすぎて、チャレンジしないままチャンスを逃したことが何度かあったのではないでしょうか。
損失回避性がチャレンジできない原因に
ここで、
と思った人もいますよね。
もちろん、その通りです。
自分を守るために安全な道を選ぶのは当たり前ですよね。
しかし、「損失回避性が原因でチャレンジできないままチャンスを逃している」としたら、あなたは既にもう損をしているとも言えます。
損失回避性には、あなたの想像力が影響しています。
想像とは、もしかしたらあり得ることで、もしかしたらあり得ないことなのです。
損失回避の法則では、良い方よりも悪い方を想像して「損をしたくない」と思うのです。
きっとチャレンジできない原因を知れば、「危ない橋は渡りたくない」などと思っていられなくなるでしょう。
ネガティブな想像をする
チャレンジできない最大の原因は、ネガティブな想像をすること。
チャレンジする前にネガティブなことばかり想像していたら、どうなるでしょうか?
もしあなたが起業をしたいと考えていたとします。
前からやりたかったビジネスですが、始める前にこれからのことを想像します。
・でも起業するにはお金も必要だし、今の仕事を辞めることになるだろう。辞めてしまってから失敗しても他の仕事が見つからないかもしれないし、無一文どころか借金を抱えるかもしれない。(損をする)
こうして「得をするより損をしたくない」と損失回避性が邪魔をし、ポジティブな想像ではなく、ネガティブな想像ばかりしてしまうかもしれません。
せっかく「起業したい」という願望があるのに、損失回避の法則によってネガティブな想像ばかりしてしまったら、「危ない橋を渡るなら今のままでいい」と考えるようになるでしょう。
まだ実行もしていない「やりたいこと」を、それが叶ったり成功する想像さえできなくなってしまうのは、非常にもったいないことです。
【関連】
ポジティブ思考になるためのコツ
臆病になり、無難な選択をする
やりたいことがあっても心配は付き物。
「ケガをしたり大きな損失を背負うかも」と思うと、チャレンジするのは怖いものですよね。
多くの人は、それなら、結果がはっきりしている安全な方を選択してしまいます。
例えば、あなたが「海外で生活してみたい」と思っているとしましょう。
貯金もあり、経験を積むなら今が最適な時期だとします。
でも、ここで「得をするより損をしたくない」と「損失回避の法則」が働きます。
・でも海外で暮らすには言葉やカルチャーの違いなどの壁にぶつかるだろうし、治安も悪いかもしれない。しかも病気にでもなったら医療機関が安全かもわからないので、何かあったら大変だ。(損をする)
このように、損失回避性が邪魔して臆病になり、最終的には「旅行程度で済ませて海外生活は諦めよう」と無難な選択になってしまいます。
一度臆病になり無難な方を選択すると、これから先も「旅行で行けるんだから別にいいか」と思ってしまうでしょう。
そうなると、「もしかしたら海外で人生の転機に恵まれるかもしれない」というチャンスは、掴めないまま終わってしまいます。
せっかく目の前に可能性やチャンスがあるのに、自分の損失回避性に従って、チャレンジする道を選択できなければ、それこそ「損」になってしまいますよね。
損失回避性との付き合い方
損失回避性は、自分が損をしないために人が自然に行う自己防衛です。
どんな行動派でもチャレンジャーでも、「損失回避の法則」が働いて、自分を守ろうという心理は働きます。
人が驚くようなことにチャレンジして成功する人たちも、ただ闇雲にチャレンジしているわけではありません。
もし「損失回避の法則」を完全無視して突っ走ってしまったら、勝つ可能性の低いギャンブルや危ない投資に手を出して、人生を棒に振ってしまうこともあり得るわけですから。
チャレンジ精神がある人たちも、知らず知らずのうちに「損失回避の法則」を使い分けているのです。
損失回避性を理解して、チャレンジしよう
損失回避性の仕組みを踏まえた上で、損失回避の法則を使い分けて、今後に役立てるために、どのようなことに注意したらチャレンジできるようになるのか考えてみましょう。
・失敗も人生経験の一つと考え、少しの損失にこだわらない
・臆病にならないように、下調べや準備を入念にして自信をつける
・「損失回避の法則」が働いて安全な方を選んだ時点で、もう一度チャンスを逃していないかよく考えてから選択する
損失回避性とは、あなただけにあることではありません。
誰しも多かれ少なかれ、必ず持っています。
そして、「損失回避の法則」をしっかりと理解し、必要なときに使い分けることで、誰でもチェレンジできるようになるのです。
チャレンジできないと尻込みをしだしたら、
・「今の自分を引き留めるものは何なのだろう」
・「損失回避の法則に振り回されてはいないか」
以上の3点を、自分に問いかけてみてください。
そして、まず「自分は今、損失回避の法則が働いて、臆病になっているんだな」と一旦受け止めることが大切です。
一度受け止めたら、客観的に見て、「本当にこれは損なのか、あるいはリスクなのか」など、冷静に分析しましょう。
きっと、今までよりも判断力が上がり、チャレンジできることが増えるはずです!
最後に:今がチャンスは最高のチャンス
あなたが「チャレンジして人生を変えたい」と願っているなら、「怖い」と思うものに思い切って飛び込んでみなければ、望むものは手に入りません。
「今がチャンス」という言葉をよく聞きますが、「何かしたい!」と思ったときが最高のチャンスなのです。
あなたは、今までの人生で失敗をしたり、損をしたりと苦い経験をしてきたことでしょう。
その嫌だった経験が邪魔をして、ネガティブな想像をしたり、今以上に損をしないようにと反射的に自分を守りすぎていることに気づいてください。
「損失回避の法則」とはよくできたもので、使い方によってはあなたの心配を覆すことも可能なのです。
もし、あなたが今選ばなければいけないとしたら、どちらを選びますか?
b 失敗や損失がある可能性もあるが、成功したら夢が叶う
チャレンジしたいと願うあなたなら、迷わずbを選んだことでしょう。
今まで「リスク」だと思っていたことを「チャンス」に。
今まで「安全」だと思っていた選択を「リスク」に。
自分にとっての「リスク」と「チャンス」を見直して、「損失回避の法則」を利用してみれば、むしろ「損失回避性」はあなたの大きな味方になります!
失うものがあなたの夢や人生だとしたら、それは大きな損失です。
だったら、目先の小さな損失を気にすることなく、チャレンジして大きなチャンスを掴むべき。
「今がチャンス!」そう思ったらチャンスは今しかないのです。
今がチャンスは最高のチャンスなのですから、今しかできないことに思いっきりチャレンジしてみてください。